相続でいわゆる「争族」になる原因で多いのが次の二つの例です。

  1. 相続人の一部に生前贈与している
  2. 相続人の一部が長年介護をしていた

例えば、実家を出ていった長女が結婚をして住宅を購入するときに、父親が一部住宅資金を贈与した場合。

のちのち相続が発生した場合に、このお金が贈与だったのか貸付だったのかや金額がいくらだったか分からなくなってしまうこともあります。 この場合長女のほうは「贈与されたもので金額も少ない」と主張したい、もらっていないその他の兄弟は「お父さんが貸し付けたもので返してほしい、もしくは相続分をその分減らしてほしい」と思うでしょう。 そうすると遺産分割の際にこの金額を考慮に入れて分配しなければいけないが、その前提で争うことになってしまいます。

また最近よくあるのが、介護の負担の問題です。
介護が始まるとその期間は平均して3年から5年、長いと10年以上に上ることにもなります。
その間献身的に介護をしていた人と、何もしていない人では精神的・肉体的負担にかなり差があります。

にもかかわらず、相続の際には平等に分けなければいけないとなれば、介護をしてきた人の苦労が報われません。 もちろんお金のために介護をしているわけではないのですが、気持ち的には納得いかない部分も出てきてしまいます。

こういったケースの場合、各相続人が金額をきちんと算定することは難しくなります。それが「争族」の原因となってしまうのです。解決方法として以下の点が挙げられます。

  • 特別受益(生前贈与)分と寄与分はなるべく具体的に記録として残しておくこと。
  • 介護する人は、介護でかかった費用などの明細を取っておくこと。
  • できれば財産を残す人が遺言書の中に記載しておくこと。

これだけでも後々大きく変わってきます。 ちょっとのことで後々揉めることがないのであれば、きちんとしておきたいですね。

もし遺言書の中で書き残しておく場合の書き方例も参考にどうぞ

「長男は遺言者が病気で体が不自由になった平成15年から、遺言者を扶養し、療養看護に努めていたこと、長女には自宅購入の際に1000万円を贈与していたことを考慮して、本遺言書のとおり遺産分割の方法を指定した。」