相続登記の義務化について
令和6年4月1日から相続登記の義務化が開始されました。
相続登記をしないとどうなっちゃうの?
ここでは、相続登記の義務化について解説します。
相続登記とは 『不動産の所有者が亡くなった場合に、不動産の登記の名義を被相続人(亡くなった方)から相続人(受け継ぐ方)へ名義変更を行うこと』 です。
被相続人名義から相続人名義へ登記申請することで、不動産の所有権が移転します。
不動産の登記は、全国にある『法務局』という所で行われています。
法務局とは
主に不動産である土地・建物や株式会社などの法人の登記を扱っている国が運営する機関のこと。
全国に約500か所ほどあり、1つ1つが決まられた管轄の登記などの事務を管理しています。
法務局の窓口時間は、月曜から金曜の8時30分から17時15分までで、土日祝日は休みです。
被相続人と相続人とは
被相続人は、相続財産を残して亡くなった方。
相続人は、その財産を受け継ぐ権利がある方。
登記がなされることにより、その不動産の物理的な状況はもちろん、所有者が誰なのか、また、所有権以外にどのような権利が設定されているかといったことが公示され、登記を受けた者はその権利を第三者に主張することができるようになります。
ただし、登記の効果として第三者に自分の権利を主張することができるとしても、それは登記をした場合に受けられる一種の恩恵のようなもので、登記をするかどうかは権利にすぎないとも考えられていたため、これまでは相続登記の申請期限や申請義務はなく、あくまでも希望する人が任意に行うべき手続とされてきました。
相続人は、不動産(土地・建物)を相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすることが法律上の義務になります。 正当な理由がないのに相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。
相続登記の義務化は2024年4月1日スタート
これまでは、あくまでも相続人の任意とされていましたが、2024年(令和6年)4月1日から義務化する法律が施行されました。
3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料
相続登記の申請期限は「自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、相続により不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内」です。分かりずらいですが、つまり自分が相続人であり相続財産に不動産があることを知ったときから3年以内にする必要があるということです。
正当な理由なく、この期限内に登記をしなかった場合、法務局から一定の期間内に申請をすべき旨の「催告」がされます。この催告にも応じなければ、10万円以下の過料が科せられることになります。
「正当な理由」について
※法務局の登記官が個別事情を確認して判断している
《例えばこのような場合、「正当な理由」として認められる可能性があります》
- 相続人が多数で、必要な資料の収集や相続人の把握に時間がかかっている
- 遺言の有効性や遺産範囲が争われている場合
- 相続登記申請義務者が重病などの事情を抱えている
- 相続登記申請義務者がDV被害者等であり、生命・心身の危害が及ぶ恐れがある
- 経済的困窮により登記申請費用を負担できない
過去の相続分も義務化の対象
義務化の施行日(2024年4月1日)以前に発生していた相続にも遡及して適用されます。遡及とは、過去にさかのぼり法律の効力が発生することです。つまり、過去に相続した相続登記未了の不動産も登記義務化の対象となります。2027年3月末まで猶予期間がありますが、正当な理由なく期限内に申請しなければ、過去に相続した不動産についても10万円以下の過料の対象となります。
なぜ、相続登記が義務化されのか
相続登記がされないこと等により、以下のいずれかの状態となっている土地を「所有者不明土地」といいます。
「所有者不明土地」
①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地
②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地
「所有者不明土地」の所有者の探索に多大な時間と費用が必要となり、公共事業や復旧・復興事業が円滑に進まず、民間取引や土地の利活用の阻害要因となったり、土地が管理されず放置され、隣接する土地への悪影響が発生したりするなど、様々な問題が生じています。
全国のうち「所有者不明土地」が占める割合は九州本島の大きさに匹敵するともいわれています。今後、高齢化の進展による死亡者数の増加等により、ますます深刻化するおそれがあり、その解決は喫緊の課題とされています。
「相続登記義務化」により、所有者不明となって放置されている多くの不動産の管理の所在が明らかになり、現所有者に対する管理費や税金等の請求や、所有者不明のために進められなかった公共事業への活用等につながっていくと思います。