相続の専門家の選び方 -それぞれの特徴-

税理士さんに頼む

相続というと頭に浮かぶのは税理士さんだと思います。相続税の申告や納税が必要であれば、税金の専門家に相談するのが一番だと思います。

ただ、相続税申告が必要な方は全体の6〜8%と言われています。よって約90%の人にとって相続税申告必要ないので、税理士さんに相談する必要がありません。

また、税理士さんのなかでも相続を専門に扱っている方はとても稀です。全国で年間の相続税申告が4〜5万件に対し、税理士さんの数は6万人。平均すると1年に1件あるかないかです。それくらい税理士さんにとっては相続案件に遭遇することが少ないのです。

弁護士さんに頼む

弁護士さんに頼むのは通常、遺産相続に争いが生じた場合です。争いが起きる前から遺産分割協議の一切の交渉を弁護士さんに頼む場合もありますが、ごく稀なケースでしょう。

一般的には、まずは相続人間で遺産の分割方法について話し合いをします。どうしても折り合いがつかない場合には裁判手続きに移行しますが、その最終段階で弁護士さんに相談するケースが多いです。相続の細かい手続きについては専門でない場合が多いため、紛争性がなければ相談する相手として適切ではないと思います。

信託銀行に頼む

最近では信託銀行が遺言書作成や相続後の「遺産整理業務」といってご遺産の承継手続を行っています。

ただ、信託銀行の本業は銀行業務ですので、相続手続きが主たる業務ではありません。また、担当者が定期的に変わったりするので、遺言書作成時の担当者が不在で、故人の意思がうまく伝わらなかったりすることもあります。さらに税務申告や不動産登記手続きなどは税理士・司法書士が行うことになり別途費用がかかることから、一般的に費用が割高になるといわれています。

FP(ファイナンシャルプランナー)に頼む

生前からFPの方にお金の相談をしている方も多くなってきました。家族の事情や資産について前もって相談していれば、相続の場合でも話が早く進むこともあります。信頼のおける方でしたら一番の相談者だと思います。

ただ、実際の手続きについてはやはり専門家がやることになります。

各専門家にパイプを持っているFPさんであれば良いかもしれません。

行政書士さんに頼む

行政書士の業務は多岐にわたり、本来は許認可が主な仕事なので、相続に詳しい人は限られています。

また高度な私法の知識特に不動産登記に関して見識があるかというとそうではないケースが多いです。

司法書士に頼む

司法書士の業務も多岐にわたっていますが、各種手続きには詳しいですし、不動産・金融実務は司法書士の根幹業務です。相続の登記は毎年全国で90万件以上申請されています。司法書士の数は2万人ほどですので、単純に年間一人当たり45件ほど携わっていることになります。私法的知識も豊富なので、相談相手には一番適していると思います。

ただ、税務的な部分は税理士の専門分野ですの、そこを補完してくれる立場の人が必要でしょう。

結論としては、相続の相談で最初にたずねるのに一番適しているのは「司法書士」でしょう。司法書士に税務的な知識があればとてもいいのですが、税理士法の問題もあり、個別の税金については相談できないという業界の壁があります。ただ、税務知識が全くないかというとそうではありません。

当事務所でも、相談者の中で年間10件超、相続税がかかる方がいらっしゃいますし、財産管理をさせていただいている方は地主の方が多いです。多くの税理士さんと共同してお仕事をさせていただく中で培った税務知識もあり、実務にも精通しております。